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写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

風博士

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昨日は、三軒茶屋の世田谷パブリックシアターへ。
遣都に誘われて、シスカンパニー公演の「風博士」を見に出かけた。入口で遣都のマネージャーさんと逢ってから入場。S席1階のI列。前方のど真ん中だった。ここを取るために、遣都は頑張ったんだろうな。熱帯樹の舞台から丸1年、しっかり心を込
めて見させてもらうよ。
それにしても、このパブリックシアターは、なんだか洞窟みたい。席は3階まであり、壁は打ちっぱなしの石模様。見渡すと8対2で女性陣が圧倒的に多かった。19時ジャスト、時間通り幕があがった。
題名にもなっている風博士役の中井貴一さんから場面は始まっていく。映画やテレビで拝見することはあっても、生の中井さんは初めて。そして最初からその厚みのある声に驚かされた。
場面は大陸のどこか、日本軍と隣国の争いが激化し、それらに翻弄される市井の人や兵士たち。戦争とはなんぞや、それらを考え抜いた先に見える深い闇、それを風博士の目線で、時間と共に流れていく。
白鳥座、白痴、星屑と見えないプロットに導かれ、坂口安吾作品らしく、星屑が胸に刺さったよなんて言葉も散りばめられる。
遣都の役は19歳の初年兵。戦場で中井貴一さん、吉田羊さん、段田安則さん、渡辺えりさん、趣里さんたちと交流しながら成長していく。その中でも特筆なのは、まるでミュージカルのように歌が多いこと。それも中井さん、吉田さん、渡辺さんはプロ級。声量はもちろん、情感の響きが美しいこと。そこに遣都が初めて歌うもんだから、のけぞってしまった。遣都も上手い、、、んだけれど、プロばかりに囲まれてしまうから、コミカルな感じで浮かび上がる。その演出もまた笑えた。
「この戦争はどっちが始めたんだ? どうして始まったんだ?初年兵や二年兵の若い兵隊は、偉い人たちのただの弾よけ。何も知らず死んでいくだけ」
心のこもった遣都の演技に、涙が溢れかけた。少し前まで旅していた激戦地を思い出し、こんな兵たちが沢山死んでいく映像が、脳裏に何度もよぎった。
静かな動きの中にも感情を寄せ、間を怖がらず楽しむ演技に、遣都は舞台向きなんだなと強く想わされた。「しーさん、しーさん」と叫びながら撃たれる場面、そして亡くなっていく無常
観。その言葉の意味は敵国の意味で「ばかやろう」だった。
吉田羊の悲痛な言葉が、皆の心にグサリと刺さる。
「どうして同じところ(子宮)から人は生まれてくるのに殺し合うんだ」
そして風博士の言葉に、心の奥の澱がうずいた。
「風に流しましょう、水ではなくて」
そして、こと座のベガ、わし座のアルタイル、はくちょう座のデネブが作る夏の大三角で、時間と命が繋がっていく。
大きく笑い、深く考え、濃く感じられた舞台。遣都の舞台をすべて見ているが、個人的には最も心が動いた作品だった。遣都も少しずつ大人の階段を上り、日々の時間を芸の肥やしにして邁進する姿に、打たれるものがあった。
舞台が終わり、楽屋へ行くと、遠くからホッとした顔の遣都が歩いてきた。
「良かったよ、お疲れさん」
「本当ですか?」
「うん、本当に良かった。遣都の心を見せてもらったよ」
「有難うございます」
柔らかくはにかみ、少し大人になったのか、男らしい視線を向けた。
          ノムラテツヤ拝
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