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写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

炎の遺跡

野の花(c)

クエラップ遺跡の駐車場に車を置いて、ここから石段の道を2.5キロ歩く。
登山道の脇は、ランや見たこともない花で覆われ、気分はお花見。だた、ちょっと早歩きをしたりすると標高が3000mなので、動悸が激しくなる。
黒い蝶々が、花の間を飛び、サルオガセが木々に絡まる。動物の糞尿の匂いが森の香りと入り混じる中、ブルーのルピナスが風にそよぐ。
クエラップ遺跡にどんどん近づくにつれて、どんどん体が熱くなってくる。肌色というよりも黄土色の城壁が見えてきた。
クエラップ城壁(c)

ガイドのジョンが解説してくれる。
「クエラップ遺跡内には、250の家がありました。ひとつの家で約4人住んでいたとすると1000人ほどが、ここで暮らしていたようです。クエラップ遺跡の語源はコングラッペ→クエラッペエ→クエラップと転訛し、意味はクンブレ・頂きを意味します」
ここは確かに山の頂上に作られた遺跡、マチュピチュとかは周りにもっと高い山があるけれどクエラップは、周辺にこれ以上高い山は無かった。
「遺跡の大きさは長さ1キロ、幅100mと巨大です」
城壁2(c)

見渡すと、崩れおちた岩がゴロゴロとし、そこのツタが絡まっている。
良いっ。 僕の好きなタイプだ。
入口の前まで来ると、エネルギーは更に強くなる。入ろうと思っても押し戻される感じだ。
クエラップ遺跡は2ヶ所の入口がある。
クエラップ入口(c)

その両方ともが入るのは大人4人くらい通れる広さで奥に行くにしたがって、一人通るのがやっとになる。戦闘するのに、適した作りだったのだろう。そして道はまっすぐではなく、ジグザグに刻まれ、3階層に分けられていた。
ウクパチャ、カイパチャ、ハナンパチャ。インカの思想も3段階。きっと文明を作ってゆく上で3という数字は何か特別なものになってゆくのだろう。
みんな一緒なのだ。
クエラップ遺跡を上から見るとコンドルの形になっているのも、クスコの近くのサクサイワマンやマチュピチュと同じ。違うものを探そうとしても、同じものに目がいってしまう。
一階から長い階段を上り、二階へ。
そのフロアには円柱形になっている石組が沢山残っていた。
円柱の家跡(c)

ジョンは「この家の下に先祖を埋葬し、その上で人が暮らしたという報告もあります」という。
その言葉を聞いた瞬間、また似ている場所を思い出してしまった。
コロンビアのサンタマルタ山塊屈指の遺跡「シウダーペルディーダ(失われた都)」も円柱の家の跡に先祖を埋葬し、自分たちは連綿と続く先祖の先に生かされている事を日々実感していたのだ。ここも全く同じ雰囲気だった。
二階から階段を上り、三階へ。
上がった瞬間に、エネルギーがマックスになる。
三階は祈りの場所だったのだろ。ジョンに聞くと、そうだと頷いた。
南と北に一つずつテンプロ(寺)があり、中間に平たい一枚の岩があった。
そこからエネルギーが噴出しているのだ。この下に何かあるのか?それとも今現在も気のエネルギーが祈り込まれているのか?
血がたぎってくる。強い、強い。全身の毛が逆立ってくる。
真ん中の岩に手を当てると、炎のように爆裂の気が、僕の体をグルグルと巻き上げる。更に強くなってくる。汗が吹き出し、僕は失神しそうになった。
「炎の遺跡」
クエラップは、アマゾンの民たちの炎の遺跡だったのではないか?
見晴らし台から、周りの山を見渡すと、トウモロコシなどの畑がパッチワークのように整然と並んでいる。空気が濃すぎるのか、息が詰まってしまう。
リャマ2(c)

三階から二階を見下ろすと、さっきまで分からなかった二階の気が見えてくる。二階の円柱の石組みから、竜巻のように気が上がり、三階はそれらをコントロールしているのだ。平たくて、熱いエネルギー。地中からマグマが噴出しているみたい。
二階の遺跡(c)

平たい石のすぐ脇に、何だか異様な黒い雲母が混じった石がある。これに手を当てて、僕はすぐに引っこめた。エネルギーがグングン吸われる。これはきっと昔の処刑場だったに違いない。
そして平たい石の右側にある神殿跡に裸足で立ってみると、足にゴンゴンとエネルギーが当たり、目をつむると、瞼の裏が真っ赤になった。
神殿跡(c)

三階から二階へ落りると、温度が一気に下がった。空気も細やかになり、家の中はやっぱり地中に先祖の骨を感じる。
円柱の家は、温度差によって細長く割れた石を使い、それらを積み上げて作られている。
台所跡には、野菜や果物などを入れておくデポジット、バタンと呼ばれる石臼、暑さ対策のためベンティラシオンという空調設備、クイ(天竺ネズミ)の飼われていたところなどがそのまま残されていた。
オリジナルが残っている強さを想う。
その上に修復という名を借りて塗り固めてゆくのも一つの作業、でも僕はやはり朽ちていても良い。オリジナルから、その時代に住んでいた人たちの息吹を感じたいのだ。
クエラップの壁(c)

二階の一番南にはティントゥーラと呼ばれる、祈りの神殿があった。
三階の炎の気とはうって変わって、あまりに細やかな気が辺りを埋め尽くしていた。
まったくもってパーフェクトの遺跡だった。
住居跡(c)

炎のようなエネルギーから、細やかで上質な若葉のようなエネルギー、そして氷のように冷たく静かなエネルギー。そのすべてが場所を変えることで、圧倒的迫力でせまってきた。
帰り道は、雨がポツポツ降り始め、色が冴えた。
クエラップ出口(c)

城壁の色、花の色、葉っぱの色が、まるでそこから発光しているかのように光り輝いていた。
間違いない。僕にとって、この遺跡はマチュピチュを凌ぐものだった。
                                   ノムラテツヤ拝
石模様(c)
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テーマ:自然の写真 - ジャンル:写真

ペルー | コメント:2 | トラックバック:0 |
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コメント

すごい!すばらしいですね!クエラップ遺跡・・・。
ドキドキしながら、拝見しています。
てっちゃんが「石にも記憶があるんですよ。」とおっしゃっていたことがずーっと、忘れられなくて。私の聞き間違いなのか・・・な?どういう意味??と。
でも、今、感じることが出来ました。
ありがとうございます。
2009-02-23 Mon 22:22 | URL | kimiko [ 編集 ]
コメント、どうも有難うございます。大自然はそれそのものが生命体、なので足もとに転がる石にもまた記憶が刻まれているのですね。クエラップ遺跡、カラヒア遺跡、チャチャポヤスは魅力的な場所です。
2009-02-24 Tue 00:15 | URL | Tetsuya nomura [ 編集 ]

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