オーイ・ジジイ2021-03-05 Fri 13:08
![]() 入院していると、普段見ることのない人たちと接するので、新鮮な学びがある。 医師や看護師、そこに関わる人たちは勿論だけれど、同じ階にとんでもないおじいちゃんがいる。 勝手にオーイ・ジジイと名付ける。 入院した初日から、その力はいかんなく発揮されるが、とにかくナースコールを押すことはない。基本、「おーい」、「おーい」とよく通る声で看護婦を呼びつける。「どうしました」と顔を出せば、「夕飯まだだよー」、「まだです。あと2時間もありますからね」。看護師が帰ると、すぐにまた「おーい」の連呼が始まる。最初は通っていたナースたちも、オーイ10回くらいに1度行くように。それが更に無視されるとオーイ15回目からは言葉が「痛いよー、痛いよー」に変わる。何度かパターンを確かめたので間違いない。 さすがに痛いよでは行かねばならず、声をかければ「おなかが減って、痛いんだよ~」と悲しそうにわめく。それにしても、どうだろう? もし僕が1時間、あれだけ叫び続けていたら、まちがいなく声が枯れる。でもオーイジジイの声帯は最強を極め、まったくそのだみ声は衰えることはない。 「あのおじいちゃん、凄いパワーですね」。 看護師に聞いたところ、入院してもう130日以上、一度はあまりに酷いため、別棟に移動させられたが、今度はそちらがオーイジジイ攻撃に疲れ果て、元の鞘に戻ってきたという。まさに最強のジジイなわけだ。 最初はうるさいなぁ、静かにしろよと思っていたけれど、今日の昼にちょっと勿体ないかなと思い始めた。 昼食の白身魚が、わぉというほど不味かった。これは無いなと残していたら、遠くからまたオーイジジイが叫びだした。 「おーい、おーい、おーい、おーい」。今回は連射砲だ。次の連射に入ろうとしたところで、看護師が「今回はどうしましたか?」と聞いた次の言葉に笑った。 「不味いんだよ~、ごはん、不味いんだよ~」 オーイ・ジジイ、まともな味覚しているんだ。確かに今日の昼食は不味い。それ以降、何だかシンパシーを感じてしまった。 目の前の看護師たちはさぞ大変だろう。ただ100日も一緒にいれば、皆、それぞれ対処し、技を身に着けていくもの。大変なのは短期間の僕ら患者側。でもね、少しだけ見方を変えて、ジジイに寄り添うポイントを見つけられれば、あまり嫌じゃなくなるから、人間って不思議。 「おーい、おーい」 「どうしたの?」 「今日、何処に散歩に出かける?」 こんな可愛いところもあるのだ。 ノムラテツヤ拝 ランキングに参加しています。“地球の息吹”を楽しくご覧下さった方は、ぜひ1日1回「人気ブログランキングへ」ボタン ![]() ![]() |
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