fc2ブログ

写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

悪夢

TEN07275.jpg

あの経験を、どのように残せばいいのか分からずにいた。
でも、書いておかないと、少しずつ忘れていってしまうから、自分に起こったことを綴りたい。
骨折後、手術をして2日後から、炎症があるからなのか、一日中ベッド上にいるからなのか、夜になると寝ようとしても寝付けない。点滴で水分もかなり補給しているから、1時間に一度はトイレに出かけて小便をする。病院内の機械音なのか、低いブーンという音だけが夜の闇に響いていた。
浅い眠りが続くことで、起きた瞬間、これが夢なのか現実なのかが判別できない。足の骨折をきっかけに、どんどん悪くなっていく夢、または別の個所が崩れていく夢、2度ほどはそれらが現実だと思い飛び起きた。それらが連日続くと、今度は眠るという行為自体が怖くなる。人生で最も辛いこと、それは眠れないことかもしれない。眠るという行為は、魂があの世と繋がっている状態だと僕は信じる。元いた別世界と繋がることで心は穏やかになり、疲れた体が元気になっていく。眠る行為が出来なくなると、人は落ち着きがなくなり、少なからずパニックに陥る。「もうどうなってもいいや」、なんて気持ちも自然と沸き上がってくる。人生に魔が差すとは、こんな瞬間(とき)を言うのかもしれない。それがもう一段酷くなれば、住んでいる屋上から身投げするなんてことも十分あり得る話だと思う。
どうしても早く退院したいと願ったのも、ソコだった。病院がうんぬんではなく、この一日中、横になっている時間を何とかしたかった。先生は僕の気持ちを汲んでくれ、通常2週間の入院予定を、6日で出る手筈を整えてくれた。
人生はピーンと張りつめたピアノ線の上をバランスを取りながら歩んでいくようなもの。そこから少しでも足を掛け違えたら、日常出来ていたことが突然出来なくなる。今までどうなっても良いや、眠剤を飲まないと眠れないかも、なんて一度も考えたことのない僕には、ただショックだった。でも、家へ帰り、美味しいご飯を食べ、よく話し、出来るだけ自分で動くことで、少しずつ眠りが深くなり、悪夢が遠ざかっていった。
僕らの日常という奇跡は、そんな薄氷を踏む中で作られていることを体と心で学んだ時間だった。そこさえ自身に刻み込めれば、残りの人生は自分と周りにいる人たちへの感謝しかなくなる。炎症により腫れていた左足のむくみが徐々に取れ、昨日まで見えなかった血管や皺が浮かび上がる日々の有難さ。一日、一日、確実に回復している姿を見ると、これから何をより大切にしていかねばならないかが見えてくる。そうか、あの悪夢は、それを僕に感じさせる天からの処方箋だったのかもしれない。この世は光と闇がらせん状で混ざり合う世界。だからこそ両方を感じ、どちらに振れようと、それを楽しみに変えていきなさい、と。
          ノムラテツヤ拝
ランキングに参加しています。“地球の息吹”を楽しくご覧下さった方は、ぜひ1日1回「人気ブログランキングへ」ボタン人気ブログランキングへのクリックをお願い致します!以下のライオンボタンの上でクリックしてみて下さい。吠えます!
人気ブログランキングへ

テーマ:スナップ写真 - ジャンル:写真

日本 | コメント:0 | トラックバック:0 |
<<全体模様 | ホーム | 日本一の鷲>>

コメント

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

| ホーム |