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写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

絶景世界10

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聖なる大陸、南極に到着してから三週間。
空には雲が重くへばりついている。エンジン付きボート、ゾディアックに乗り込み、今日も南極の大地を踏みしめる。
ふと足下へ視線を移すと、雪面に不思議な線が刻まれている。その先には沢山のペンギンが歩いていた。
彼らは、自分の巣から海へ出かけるとき、同じ道を常に通り、圧雪しながら「ペンギンロード」を作り上げてゆく。
エッホ、エッホッと進んでゆく彼らの背中をぼんやり眺めていた。一歩、二歩、三歩、次の瞬間、頭から見事にこける。あっぱれなこけっぷりに思わず笑ってしまう。恥ずかしそうに立ち上がり、また歩いてはこける。その繰り返し。
ふと疑問が浮かんでくる。ペンギンがフリッパーと呼ばれる「手」を広げて歩くのは何故か。バランスをとっているためではないのか?
近くにいたナチュラリスト、リズに聞いてみる。
「ペンギンはどうして手を広げて歩くのですか?」
彼は微笑みながら、ゆっくりとした口調で答えてくれた。
「手を広げて歩くのは、熱を脇から放出するため。今の気温はマイナス10℃、ペンギンにはまだまだ暑いのさ。もしマイナス40度まで下がったら、ペンギンは手を脇に擦りつけるようにして歩いてゆくよ」
南極には、多くの生命が息づいていた。沢山のペンギン、オキアミなどの甲殻類、そして海を黒く染めるほどのプランクトンたち。
今この瞬間も、ペンギンはどこかの氷山を歩いている。この遠い世界と僕たちの世界は、同じ「とき」によって繋がっている。 ペンギンが一歩一歩あゆむごとに、時間も止まることなく一瞬一瞬刻まれてゆく。
流れゆく時の中で育まれる、沢山の生命に思いを馳せると、生きとし生けるものは全て、それらを取り巻く自然によって生かされていることを実感する。
「生命のゆりかご」、南極大陸はこれからどうなってゆくのか? 
それを見届けたい・・・、そんな思いに駆られながら、僕はペンギン大陸をあとにした。
  ノムラテツヤ拝
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テーマ:スナップ写真 - ジャンル:写真

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