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写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

史さん

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大好きな女性がいた。僕がまだ20代の頃、横浜の秋山木工によく遊びにいかせてもらった。
秋山木工社長のとしてるくんは、丁稚制度を使い、一人前の木工職人を作るカリスマ。その奥様が史さんだった。毎回美味しい毎回美味しい手料理でもてなしてくれ、最近の僕の話を、ゆったり相槌を打って聞いてくれた。
多分、、、うちの母に似ているのだと思う。愛情の塊というか、優しさの奥に芯のような強さがあるというか、ゆったりと話しながらも、じっくり僕の瞳の奥を観てくる。
どうして史さんといると、こんなに落ち着くのかな? 史さんは、凄腕の芸術家一家に生まれ、陶芸を専門に大成されていた。そんなことも知らない僕は、史さんにとんでもないお願いをした。
「どうしても僕、やりたい夢があるんです」
「どんな夢なの? てっちゃん」
「ゴーストをやりたくて」
「ゴーストって?」
「映画なんです。男性が車にひかれて亡くなってしまい、愛する人の下へ幽霊として現れるんです。そこで彼女がロクロをひいているんですが・・・」
僕の説明が悪かったのだろう、史さんは頭に???をたくさん付けながらも、「私に出来ることなら、なんでも良いわよ」と快諾してくれた。
早速陶芸の部屋へ連れていってもらい、史さんはあっという間にロクロを回し、土から見事な椀を作り上げていく。たちまち史さんはデミ・ムーア、僕はパトリック・スウェイジとなり、彼女の背後から抱きしめ、手を這わせて椀をぐちゃぐちゃにした。
「史さん、有難うございます。夢がひとつ叶いました」
「・・・・・こんなので良かったの?」
「はい、完璧でした」
それからも秋山家へお邪魔し続け、ある時突然、史さんの死を知った。泣きながらお葬式へ駆け付けると、大空に不死鳥のような雲が浮かんでいた。
「泣かなくて良いのよ。私は自然の一部に還っただけ。いつもてっちゃんの傍にいるからね」
僕はカメラを手に取り、にじんだファインダーをのぞき、一枚だけシャッターを押した。
大好きな、大好きな史さん。彼女には、2人の娘がいた。リカちゃんとナナちゃん。二人とも、やはり史さんの血を継いでいるからなのか、一緒にいるとホッとする。
そのリカちゃんが、生まれて初めて絵本を作ったと連絡を受けたので、その原案を見せてもらった。リカちゃんらしい柳のような感性で書かれた一冊は、「わたしいろ」。
「あなたの色はなにいろかしら?」
茜色や蜜柑色、萌木色や織部色、その色から受けるイメージをパステルで描かれた淡い絵と共に、心をまるごと抱くような言葉が紡がれる。
虹色が全部重なると、透明になる。だから、僕らはいつも七色の虹に包まれている。そんな大きな愛のイメージが詰まっていた。
その出版パーティが開催されるという。残念ながら僕は撮影の仕事があるため駆け付けられないが、豪華メンバーが集い、そこからズーム配信もするという。
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間違いなく、温かな会になるんだろうな。そして天から光となって史さんも舞い降りてくるんだろうな。史さん、有難うございます。久しぶりにお会いしたいですね。
             ノムラテツヤ拝
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