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写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

新世界写真76

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岐阜市内の水道山へ登ると、紅白のテレビテレビ塔が見えてきた。その麓に昔、白亜の岐阜ユースホステルがあったことを知る人はどれだけいるだろう?
父がここに40年ほど勤務していたため、僕は幼少の頃からこの山が遊び場だった。今も、森の中を歩けば、あの頃の思い出が、ありありと浮かんでくる。風は強いが、太陽が背中をほっこりと温めてくれる。懐かしいユースへ続く石段を上ると、平地にススキの穂が揺れていた。
この地で僕は無数の出逢いをした。毎日泊まりにくる世界各国からのお客さん。瞳の青い旅人、髭の濃いダンサー、クタクタの服を着たバックパッカー。そして旅人たちをもてなす側の各大学のユースホステルクラブのお兄ちゃん、お姉ちゃんたち。僕はそんな人たちに、沢山手をかけてもらったんだな・・・と、何だかしみじみとしてしまった。
建物や生命はいつか必ず朽ちる時がやって来る。でも最後に残る大地には様々な生命が、時々の気持ちが記憶として降り積もっていく。
南米チリに住むマプーチェ族のセルマばあちゃんが「大地の掟」を教えてくれたっけ。
「遠く日本からきた友よ、耳を澄まし、良く聞きなさい。私たちの足下に広がる大地は祖先の灰で出来、常に仲間の生命で溢れているの。大地が人間に属しているのではなく、人間が大地に属している。全てのものが悠久の時を超えた血のように繋がり、綿々と続いてきた。つまり大地に唾する者は、自分の血を汚しているのと同じこと。土地の所有権をめぐって人々は争いを起こす。でも、最後に人を所有するのは誰だい?大地ではないのかい。誰もがいつかは、その下に埋められるのだからね」
岐阜ユースの建っていた地に、静かに手のひらで触れてみる。さっきまで吹いていた風は止み、鳥の声が聞こえ始めた。
          ノムラテツヤ拝
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テーマ:スナップ写真 - ジャンル:写真

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