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写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

Dr.コトー

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コトー先生と呑んだ。
ドクターコトーの原作者、今をトキメク漫画家、山田さんと。午後6時半、友人のSAさんの紹介で、岐阜市内、金公園横の割烹料理屋にいた。カウンターから上品な階段を上がってゆくと、座敷になる。今夜の舞台はココだった。
SAさんの先輩にあたる山田さん、ドクターコトー原作者は、岐阜人だったのだ。今はドラマで俳優の吉岡さんがコトー先生役をされているので、見たことのある人は多いだろう。
18時40分、SAさんと待っていると、山田さんとFさん、そして角川書店の編集者が来られた。
「どうも」 山田さんは、ギュッと僕に視線を落とし、そして名刺交換をさせてもらう。机を挟んで、対面に山田さんという絶好の位置で、今日の酒宴が始まった。
まずビールを傾け、一品目の食事が通される。飛騨の方で取れるイグチ・キノコにイクラが乗っている。秋の味覚、今年初めてのキノコだった。舌にはヌルリとした感触と、気品ある出汁の味が染み渡った。
「ドラマのドクターコトー先生は吉岡さんですけど、他の候補がいらっしゃったんですか?」
話し始めると、山田さんの瞳はキラキラ輝く。
最初はほぼ俳優のキムタクで確定だったらしいが、映画の世界に集中したいということで急遽ドタキャン。人気グループのKUさんにも白羽の矢がたったみたいだが、最後には吉岡さんの熱意に押された。
「僕、世界で一番ドクターコトーを読んでます。もう2巻目です」
吉岡さんは山田さんに告げた。その時、ドクターコトーは15冊ほど出ていたので「まだ2巻なの?」と山田さんは告げると「もうボロボロになるまで何度も読んでしまって、1~15巻を全部買いなおして2巻目を読んでます」
そこまでコトー先生をやりたいならと、原作者の山田さんは出演にOKを出した。北の国のじゅん君から、南の島与那国島のコトー先生への変身だった。北から南へ。山田さんの言葉を借りれば、まさに極地俳優だった。
山田さんは、吉岡さんと内田由紀さんの事も、もちろん詳しく、話はフライデーの記事にそのままなるんじゃないかという勢いで語ってくれた。残念だがらこれもオフレコなので、書けないけれど・・・・・。女優のAさんの話も出た。自分が良い人でいたいために、原作を丸ごと変えて演技したことを、怒られていた。
2品目は、マツタケの土瓶蒸し。スープには滋養が満ち満ちていた。3品目は高級魚、クエの刺身。白身の弾力ある肉は歯ごたえ十分。口内の唾もどんどん上品になってゆく。
「物語はどのようにして浮かんでくるのでしょうか?」
僕の質問にじっと目を見ながら話してくれる。
「まずは自分の引き出しによって出してみる。例えば7歳の娘がいるんだけど、自分の娘から僕は引き出しを増やしてもらっている。それがキャラクターに多いに反映されるんだよ。考えに考えていると、ある時、自分が作ったキャラクターが勝手に動き出す。そうすればしめたもの。成功は近い。昔、マガジンで書いてた時に言われたんだけど、今でも大切にしてることがあるんだ。それはね、球を消してから考えろってこと」
巨人の星を例に出してくれる。
「星ヒュウマが球を投げる。これが消えたら面白いだろうね、ということから、ヒュウマの球は消された。消えたらどうするの? じゃなくて、物語はまず消してしまって、それをふまえ次を考えてゆくこと」
「僕は物語を書くときに、最後が浮かべば書けるんですが、山田さんはどんな感じでしょうか?」
「最後こそ、変わるんだよ」
衝撃的だった。山田さんは続ける。
「最初から書いていくだろ、途中まで書いたところで、これつまらないなぁ~と思うわけ。そして書いてゆくと、こっちじゃないなぁ~。別の道をとって書いて、また立ち止まって別の道へ。ある時、正しき道に入って、物語は最初に思っていたものとは全く違う結末を迎えるんだ」
4品目は長良川の天然うなぎの白焼き。これは絶品だった。味も焼き加減も、絶妙というしかない。そして目の前の長良川から上がったというだけで、更に親近感が沸いてくる。うなぎの脇には、世界で一番好きなキノコ、真っ黒い老茸(ロウジ)が添えられていた。ビールから、この店限定の日本酒へ移行。濃いめの日本酒に、顔がにんまりしてしまう。やっぱり日本酒って美味しいなぁ~。ラベルには長良川と書かれていた。これが有名なクラッシックを聞きながら作られる日本酒か、とお猪口に何度も注いだ。
5品目はすっぽん汁。コラーゲンたっぷりの身に、何ともあっさりしたスープが満たされていた。一口食べて目の前が白くなる。これは何だ、腰が抜けそう。女将によれば、これも長良川の天然すっぽんだという。今日は長良川尽くし。近郊の旬が、素晴らしい腕によって作り上げられてゆく。
「オレ、東京で、かなり美味しい生活をしてると思うんだけど、このすっぽん汁は信じられないくらい美味いね」と山田さんも涙ぐんでいた。そしてやっぱり、すっぽん汁のあとには、雑炊が待っていた。味は、書くまでもないだろう。それからは、みんなで岐阜の中心部、柳ヶ瀬をどうやって復活させ、元気にしてゆくかを語り合った。
「ここには夢がある」
山田さんは、故郷・岐阜が大好きなんだろな。
その言葉と雰囲気を感じ、僕は知らぬ間に山田さんが大好きになっていた。SAさん、Fさんも、岐阜を心から愛し、そのために色々な活動をされている。柳ヶ瀬のドンのFさんは、どうやって活気付けるかを、山田さんから真剣に聞いていた。街中のファッションショーなどのアイデアは、今にも成功しそうな匂いがした。故郷を大切にする人たちの話は、聞いていて、涙が出るほど嬉しいもの。僕も岐阜に何を返していけるだろう? 岐阜を元気にするために、一つでも多く、深く、活動に携わっていければ・・・・と思う。
SAさんが、山田さんがイラストを描いたTシャツを2枚持ってきていて、サインを入れてもらうことに。山田さんのサインは、ヤフーオークションで60万円の値段がついたこともある。ドクターコトーのコトー先生が、Tシャツに書かれ、有難いことに自分の名を入れてもらう。これからもよろしく、と書かれたTシャツを大切に握り締め、夜10時に早めの解散。
山田さんのガッチリ握手、また東京で逢いましょう、と別れた。ドクターコトーは、静かに、ひっそりと、柳ヶ瀬の繁華街に消えていった。    ノムラテツヤ拝
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