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写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

父の見た風景

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あれはパタゴニアの氷河を見ている時だった。
崩落するのを、父、母、自分の3人で眺めていた時、とつぜん父が思い出したかのように呟いた。
「お父さん、昔、ある絶景を見て、これだけ美しいものを見てしまったら、死んでも良いと思ったことがあるんだ」。
父の話を聞くと、昔に仕事でドイツに行ったときのことだという。アラスカのアンカレッジで給油して、ロシアからグリーンランドへ向かっている時、氷河が解けて氷の破片が沢山湖に浮かんでいた。それらが太陽光に反射して、キラキラ、キラキラと輝き、それはこの世の風景とは思えぬほど美しかったと目を細めた。
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僕はその話を聞いて、「いつか父が見た、そんな天上界のような光景をこの目で見たいな」と切に願った。あれから15年の時を経て、ついにその現場に立ち会うことに。しばらく厚い雲の切れ間から雪原が見え隠れしていたが、やがてそれらも完璧に取れて、広大な光景が眼下に広がった。氷河の舌部には氷河湖が作られ、そこに氷塊がモザイクのように浮かぶ。それはまるでジグゾーパズルのようにさえ見え、太陽光が反射すると、キラキラと反射し輝いた。
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「父はこんな光景を見たのだろうか」。そのあまりの美しさに、僕はおでこを窓に付け、食い入るように見つめる若き父と逢ったような氣がした。
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想いは時空を軽く飛び越えていく。僕らは今この瞬間を生き、この瞬間の中にこそ、昔も未来も含まれる。表裏一体の世界だからこそ、すべてが螺旋状で繋がり合い、映し、映される世界となっていく。やっぱり世界は際限なく美しいですね。
           ノムラテツヤ拝
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テーマ:スナップ写真 - ジャンル:写真

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