新世界写真3092022-08-23 Tue 08:38
![]() セセッション(分離派教会)の地下にクリムトがベートーベンのために描いた壁画がある。ひとたび部屋に入るなり、圧倒的なエネルギーに包まれた。 「人類の幸福とは?」 ぐるりと囲まれた3辺の壁に、クリムトなりの答えがあった。 今までの歴史、そしてこれからの歴史。その不変な生死を、緻密な計算のもとで描き上げる。一言で形容すれば、これは死ぬまでに、絶対に見ておくべきものの一つだろう。 レオポルト博物館では、クリムトの名作「生と死」を見てから、向日葵の素晴らしさに驚愕させられた。 個性を出す、または個性を消す。その両極の追及の末の作品だったのだ。だからヌードの絵の前に立てば、女性の体から匂い立つような香りがするし、風景画の前に立てば、自分がその現場にいるような臨場感が生まれる。 そしてラストがベルベデール宮殿。 ここにクリムトの最も有名な作品「LOVERS(The Kiss)」がある。 日本では接吻で知られるゴージャスな絵。 一目見て吸い寄せられるのは、やはりこのまばゆい黄金色と配置の妙だろう。 過去に誰も似た人はいず、以降もまたクリムトに似た人は出てきていない。 ガールフレンドのエミリアとの接吻。 ほのかにピンクに染まる彼女の頬。この絵もまた、溢れんばかりの色気が絵の中から飛び出してくる。 個性を全開にし、それから消し去っていく作業。それら相反する世界を一つの絵に封じ込めた名作。だからこの絵から、介在者の存在を感じないのだ。 バックは色を何度も重ねているのかと思いきや、近づくと余りに薄く塗られていて驚いた。 薄く、薄く、でも重厚に見せる神々しさ。まるでクリムトの息遣いが聞こえてきそうだった。 ノムラテツヤ拝 ランキングに参加しています。“地球の息吹”を楽しくご覧下さった方は、ぜひ1日1回「人気ブログランキングへ」ボタン ![]() ![]() |
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