パタゴニアの星空2009-03-22 Sun 00:46
![]() 風景が止まっているようだ。 よく冷え込んだ朝、朝日が山の端から昇り、大地の植物たちに光を蒔いてゆく。水分を含んだ草たちの先端には、まあるい水玉が付き、それらが光の屈折で青、オレンジ、黄色と輝く。 小鳥が木々をせわしなく飛びまわり、そして森の奥へ消えてゆく。辺りは、しんと静まり返り、葉も草も揺れない。オソルノ山の東面に朝日が当たり、空には雲ひとつなかった。まるで時間が止まったような、動画じゃなく静止画のような世界だ。たまに遠くで鳥がさえずる以外に、音も無い。 それにしても昨夜の夜空は素晴らしかった。 天の川が2本、銀河鉄道の夜に出てくる石炭袋もクッキリと見え、光の河の中に南十字星が輝いた。 ![]() 月齢は半月の更に半分。夜中になったも、まだ月影は無い。ピュアな闇の中に、星星が濡れるようにチカチカする。地平線近くにはさそり座が大きく寝そべるように光を放ち、心臓部のアンタレスは赤々としていた。 流れ星が、ビュンビュン流れ落ちる。10秒に一回くらいの割合だろうか? パタゴニアの自然を撮影するようになって、一番驚いたのがこの圧倒的な星数だった。 北中南アルプスの中、大雪山の中、宮の浦岳(屋久島)の中、利尻岳の中、など色々なところで星空を仰いできたが、こんなに恐怖を覚えるほどの圧巻な星空は見たことが無かった。 星はいつでも変わらずそこにある。 でも僕たちの周囲に人工の光があるのだ。たとえ遠くても何キロ先かに人工の光があれば、星は見えにくくなる。 パタゴニアには、我が家の森のキャビンには、その光自体がなかった。 星星の輝きもさることながら、漆黒の持つ輝きを感じたのも、パタゴニアに来てからのこと。 闇は光を引き立てるもの、そんな浅はかな想いは木端微塵に砕かれた。深い深いピュアな闇は、闇自体が発光するのだ。黒光りする。まるで若い黒毛のレトリバーのようにピカピカしている。 ぼんやりと星を眺めていると、キラキラと明滅していることが分かる。それと同じように闇も明滅しているのだろうか。お隣さんの家と天の川を組み合わせて撮影してみる。 ![]() 偽十字星が、南十字よりもさらに大きく、強く輝き、天の川に星の橋をかけている。 フクロウの低い音が森に響き、風が頬を通り過ぎてゆく。 深い闇は五感を敏感にさせる。 目を瞑っても、開けても真っ暗。 闇を漕ぐようにして歩き、三脚を立てて、大木の下でカメラをセット。 そして、天の川を撮影する。 銀河。 銀の河。 星の河。 光の河。 ![]() 見た目通りの、光の軌跡が焼きつけられる。 パタゴニアの星空は、人生で一度は見るべきもの、その筆頭のような気がしてならない。 ノムラテツヤ拝 ![]() ランキングに参加しています。“地球の息吹”を楽しくご覧下さった方は、ぜひ1日1回「人気ブログランキングへ」ボタンをクリックお願い致します! ↓ ココをクリック! ![]() |
コメント
見たいです!この夜空!!
こんな夜空を見てしまったら、その土地から離れられなくなりそうです☆ 写真でもこんなに感動して涙が出るから、生で見たら魂が飛んで行っちゃうかもしれません、私。☆^^☆ 2009-03-30 Mon 16:04 | URL | 未来 [ 編集 ]
本当にそうですね。パタゴニアは離れがたい地になりそうです。ここまで美しい場所は世界広しと言えども、そうはありませんから。星空もこれからの冬が、更に美しさを増していきます。
2009-03-30 Mon 22:19 | URL | Tetsuya nomura [ 編集 ]
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