まほうの写真2022-09-29 Thu 07:21
![]() 星野さんと出逢った頃、僕は緊張しながらも一つの質問をした。 「星野さんの写真で、教えて欲しいことがあるんですが」 「どんなこと?」 「一頭のカリブー(トナカイ)が歩いていて、その向こうに氷河のような雪がある写真。あれはどのように撮っているのでしょうか?」 「不思議だった?」 頭を上下に動かすと、まるでいたずらっ子のような目つきで、種明かしをしてくれた。 「あれは、広大な原野なんだよ。春先だったかな。まだ雪が残って、そこを一頭のカリブーが歩いていた。手前に川。少し考え、600㎜のレンズで狙ったんだ。すると、超望遠レンズの特性で、前後が圧縮された状態に。それであの一枚になったんだ」 信じられなかった。 「つまり、あれは高度差がない広大な平原だったということですか?」 「そういうことになるね。写真はレンズによって、絞りやシャッタースピードによって、肉眼では見えない風景が見られる。それもまた写真の醍醐味なんだろうね」と、柔らかな笑顔で答えてくれた。 あの時は分からなかったけれど、今であればその意味がよく分かる。レンズの特性を掴み、自分の体の視点として持つこと。そうすれば、瞬時に目の前の光景にベストなレンズが浮かび上がることを。それは何度も何度も体験し、経験を重ねることで見えてくる視野でもあった。 一頭の雄のエゾシカが、霧の河を歩いていく。星野さんが見せてくれているのかな? 僕はレンズを変えて、その瞬間を待った。 ノムラテツヤ拝 PS,写真は星野さんの撮影されたカリブーの写真。僕には魔法のように見えました。 ランキングに参加しています。“地球の息吹”を楽しくご覧下さった方は、ぜひ1日1回「人気ブログランキングへ」ボタン ![]() ![]() |
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