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写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

まほうの写真

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星野さんと出逢った頃、僕は緊張しながらも一つの質問をした。
「星野さんの写真で、教えて欲しいことがあるんですが」
「どんなこと?」
「一頭のカリブー(トナカイ)が歩いていて、その向こうに氷河のような雪がある写真。あれはどのように撮っているのでしょうか?」
「不思議だった?」
頭を上下に動かすと、まるでいたずらっ子のような目つきで、種明かしをしてくれた。
「あれは、広大な原野なんだよ。春先だったかな。まだ雪が残って、そこを一頭のカリブーが歩いていた。手前に川。少し考え、600㎜のレンズで狙ったんだ。すると、超望遠レンズの特性で、前後が圧縮された状態に。それであの一枚になったんだ」
信じられなかった。
「つまり、あれは高度差がない広大な平原だったということですか?」
「そういうことになるね。写真はレンズによって、絞りやシャッタースピードによって、肉眼では見えない風景が見られる。それもまた写真の醍醐味なんだろうね」と、柔らかな笑顔で答えてくれた。
あの時は分からなかったけれど、今であればその意味がよく分かる。レンズの特性を掴み、自分の体の視点として持つこと。そうすれば、瞬時に目の前の光景にベストなレンズが浮かび上がることを。それは何度も何度も体験し、経験を重ねることで見えてくる視野でもあった。
一頭の雄のエゾシカが、霧の河を歩いていく。星野さんが見せてくれているのかな? 僕はレンズを変えて、その瞬間を待った。
                  ノムラテツヤ拝
PS,写真は星野さんの撮影されたカリブーの写真。僕には魔法のように見えました。
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テーマ:スナップ写真 - ジャンル:写真

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