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写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

瞳の先へ

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ふとした光景が、僕の胸を温かくした。
イスタンブールから東へ向かう国内線へ。満員御礼でマスクの乗客は一人もいない。機体はぐんと持ちあがるように離陸した。その時、前の席のトルコ人の子供が、外の風景に「わっ」と声を上げた。椅子の隙間から見ると、大きな瞳で、眼下のイスタンブールの海岸線を見ている。お母さんの指も加わり、子供のテンションは更に上がっていった。
旅好きな父と母のお陰で、0歳の時から飛行機に乗せてもらった。沖縄で漁師から持たされた大きなボラのぬめりと艶めかしいうねりは、僕の心に生涯刻まれることになった。少年時代は、山好きの父と母のお陰で、岐阜のお隣の信州へよく出かけた。
「ほぅ~美しいねぇ、お母さん」と声をかける父に、僕は言った。
「山を見てるより、遊園地へ行きたい、、、」と。
でも、父も母もそんなのはお構いなしに、山の世界に酔いしれていた。
「てっちゃん、感動してる?」
「うん、感動、感動」と、旅をするたび、半ば恒例となっているやり取り。でも、それが少しずつ、ボディーブローのように浸みてくるのだ。兄と一緒に登った、尾瀬の燧ケ岳で、初めて高山の美しさに触れ、北アルプスの涸沢でノックアウトされた。こんな美しい自然ってあるものだろうか? その年は10年に一度と言われた紅葉の当たり年だった。
目の前の子供の視線を見ながら、走馬灯のように記憶が蘇ってくる。この子はどんな風景を網膜に焼き付けながら、どんな道を選択していくのかな? 人生は、取り入れたもの、見たもの、感じたことだけでかたどられていく。だったら、幼少の頃から色々な風景を見て、様々な体験をしたほうが良いのだ。うちの父の持論は「どこでも勉強、なんでも体験、駄目で元々」。父、母、僕が自然に興味が持てるように、色々な経験をさせてくれて有難う。そして何より、僕が好きになるまで、見守ってくれて感謝しています。大切なのは、自分で気づくこと。でもその気づかせる環境をたくさん作ってくれたのは、間違いなく、愛する父と母でした。トルコ上空で、何だか幼少時代を思い出し、センチメンタルに。前の子供をのぞいたら、もう、ゲームに没頭していました。ふふふ、なんだか今っぽいなぁ。
          ノムラテツヤ拝
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テーマ:スナップ写真 - ジャンル:写真

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