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写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

トリエステの道

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写真の師でもあった星野道夫さんから、大切な言葉を受け取った。
「これからの写真家は、写真だけでなく、文章も必要だから、毎日書き続けるように」。
20歳で出逢い、これからもその時間は永遠に続くと思っていた。その矢先、22歳の8月に星野さんはロシアのカムチャツカで熊に食べられ、天へ還られた。羅針盤を失った僕は焦り、友人の勧めで南極へ。そこで撮った写真で、処女写真集を作ったのが23歳のとき。「ペンギンがくれた贈りもの」という写真集を編集してくれたRさん。信用できる大人が少なかった僕は、Rさん思い切って聞いてみた。
「若い時にこれだけは読んだ方が良い、そんな本を教えてもらえませんか?」。なりふり構わない僕に、Rさんは的確に答えてくれた。
「野村君なら、2人の本を読んだ方が良いかな」
「誰です?」
「開高健さんと須賀敦子さん」
まずは開高さんの本を読んで、その一文字一文字をひねり出す、新たな地平を切り開く造語の世界観の虜となった。開高さんの本をすべて読破してから、今度は須賀敦子さん。その静謐さ、透明感が、全細胞に染み渡った。特に印象に残っている本が、「トリエステの坂道」。イタリアの孤高の詩人「ウンベルト・サバ」を日本語に翻訳するにあたり、彼女がトリエステを旅するという本なのだが、サバに負けず劣らず、孤高の透明感で言葉を紡ぎ出し、丁寧に結んでいた。
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その世界観に魅了された僕は、「いつかトリエステに立つ」という夢を持ち、48歳でようやくこの町にたどり着いた。彼女の本の舞台でもある、ウンベルト・サバの古書屋。ここで、書店の主人と盛り上がり、須賀さんの四方山話を聞かせてもらった。
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インターネット、ARやAI、チャットGPTなどで盛り上がる昨今、人と人が出逢い、溢れる想いが手渡される世界がある。僕は、古い人間なのかな。やっぱり人と人が出逢い、それらが渡されていく世界が好きでたまらない。ようやく須賀敦子さんの大切な場所へやって来ることが出来た。トリエステ、また、僕の大好きな町が増えました。
           ノムラテツヤ拝
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テーマ:スナップ写真 - ジャンル:写真

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