新世界写真6812023-09-24 Sun 10:26
![]() 深夜3時。 バチッと目が覚めた。 「来なさい」。 そんな声が闇の中から響いてきた。 僕は慌てて飛び起き、カメラザックを背負って外へ出た。 気温は10℃を切っていて、風が吹くと肌寒いほど。 いつものポイントへ行くと、マッターホルンは闇の中で浮かんでいた。 「来なさい」。 もう一度、頭の中で確かに声が鳴り響いた。 撮影地へ着くと、今までで一番晴れ渡っていた。 マニュアルで焦点を合わせ、長時間露光で撮影すると、マッターホルンの奥に無数の星々が流れ、登山家たちのヘッドランプが光の道を作った。 周りには誰もいない。眼前のマッターホルンだけ。気高く、孤高で、色に例えれば濃紫、ディープパープルのエネルギー。その氣を全身で浴びた。 初光がマッターホルンを照らし始める。 赤い。深紅の光がゆっくりと輝きながら落下していく。 30分後、全てが輝きに包まれ、朝日のショーが終わろうとしていた。でも、僕は蛇につままれたカエルのように、何故かそこから立ち去ることが出来なかった。 南側から一条の黒い雲が現れた。一本、また一本とまるで意思を持ったかのように、流れてくる。 そして遂にはマッターホルンを影絵のように浮かび上がらせる。 シャッターを押しながら、僕の意識は飛び始めていた。 ものの1秒くらいだったろうか? 縦雲と横雲が重なり格子を作り上げた。まるで御簾の間からこちらを見透かしているよう。 気が付いたら、その格子は崩れ、真っ黒い雲が全てを覆い尽くしていった。 「光」と「闇」、そのバランスこそが写真の神髄。 「静」と「動」、そのバランスこそが自然の神髄。 僕はマッターホルンとなり、マッターホルンが僕となった瞬間だった。 ようやくシンクロ出来た嬉しさに、僕はありったけの大声をあげた。 ノムラテツヤ拝 ランキングに参加しています。“地球の息吹”を楽しくご覧下さった方は、ぜひ1日1回「人気ブログランキングへ」ボタン ![]() ![]() |
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