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写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

クルミの林

赤い玄関(c)

カチン、カチン。
朝、不思議な音で目覚めた。カーテンをあけると、大きな庭。音の主は、木の実が落下し、タイルをノックしていた。
Iさん宅の豪邸を散歩する。ワインレッドを基調とした外観は、僕をワクワクさせた。
まずは栗の木で作ったような渋い玄関扉を開くと、長い長い廊下がある。
家の中(c)

あまりの長さに、昔Iさん夫婦が台所でご飯を食べているときに寝室に泥棒が入ったという嘘のような本当の話がある。夫婦は泥棒に入られているのに、あまりの遠さに気配を感じられなかったのだ。そして大好きな階段を上ると2階のリビングがある。
大好きな階段(c)

家の裏手に回ると、木々が立ち並び、そこに青々とした庭、極めつけはやはりプールだろう。
庭の風景(c)

プール(c)

カチン、またあの音だ。
木の実(c)

見ると、実が転がっていた。胡桃の実だ。
すずなり(c)

クルミの皮はブヨブヨになり、それを剥くと、あの見慣れたクルミが出てくる。
それらを足で割ると、中を食べると、バターのような濃厚な味がした。
クルミ(c)

胡桃林の中に建てられたIさん宅を散歩しながら、僕は、家族でよくクリ拾いをしに行ったことを思い出した。
父が岐阜ユースホステルのペアレントだったとき、あにき、あねき、僕の3兄弟は山栗を拾いにでかけた。兄、姉はすぐに見つけ、足で栗のイガイガをはずして、実を取り出してゆく。対して僕は、まだ小さいからか、不器用からか、足でイガイガを外せない。何度やっても栗が変な方向へ転がっていってしまうのだ。
泣く。
泣き虫な僕は当然泣いた。
「てつや、あっちにも栗がたくさんあるぞ」
父の言葉を信じて、あっちへ。でもやっぱり同じ、イガイガが剥けない。
「てつや、こっちのはどうだ?」
もとの場所に戻ると、そこには半分以上剥かれた栗が転がっていた。
秋の味覚(c)

少し力を入れるだけで、それはスルリと剥けた。
「てつや、やったな。一人で出来たな」
父が頭を撫でてくれる。
「でへへ」と得意になっていたけれど、今ならそれが父の愛だと感じる。父が剥きやすいように僕の背後でしてくれていたのだ。
胡桃を最初見た時も、この物体が胡桃になるなんて想像出来なかった。
ブヨブヨな皮の中から、見慣れた形が出てきた時のショック。そして感動。
やっぱり、自分で見て、感じて、体験する大切さを想う。
バーチャルじゃなくて、自分の五感を使って、全身で感じる幸せ。
そんなことを思いながら、僕はクルミの木をゆすっては、実を落としてみた。
カチンカチン、カチチン、雨のように胡桃は落ち、タイルを鳴らした。
                                  ノムラテツヤ拝
大収穫(c)
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テーマ:自然の写真 - ジャンル:写真

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