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写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

アサード

2kgの肉塊(c)

「やっぱり、昼食と言えばね」
ウィンクしながら、Iさんはクリコ市内の市場へ向かった。
キャベツにレタス、トマトなどの野菜類から、なんと牛肉を2キロも購入。
アルゼンチンやチリは、本当に肉が安い。2キロの肉塊で、たった1200円だから驚いてしまう。
クリコに住むIさんの妹宅へ行くと、ブラディとケルスティン夫妻が出迎えてくれた。
「わたしの息子ね」と、Iさんから有難い紹介を受ける。
旦那のブラディが、早速炭に火を入れ始めた。
炭焼き(c)

南米で、僕は何度、こんな歓待を受けただろう。
これから始まるのは、おもてなし料理のアサードだった。つまりは、巨大焼肉パーティー。
18歳から32歳まで、僕はいつも旅行者だった。旅先でもてなしてもらっては、将来の事に目を向けた。「いつか、僕も歓待する立場になる」と。
33歳~34歳まではチリ・パタゴニアの森で、世界一周中の友人や、タンデムサイクリスト、地元の人たちを歓待させてもらったが、立場が変わると目線も変化することを改めて知らされた。
普段、相手がしてくれる事が、いかに心配りの気持ちの途上にあるのかを、痛感させられるのだ。
Iさん夫妻も、ブラディ夫妻も、おもてなしの心が深かった。自然体で、流れるように、もてなしてくれる。視線の先を追って、いつも相手よりも先回りし、行動していた。
炭がやがて置火になると、網の上に2キロの巨大肉塊が並べられる。
板肉(c)

数年前はアルゼンチンの原野で、豚の丸焼き、大串に刺した羊焼き、アルマジロの焼き肉なんて経験もさせてもらった。
板肉は、少しずつ、じっくり遠赤外線効果で焼かれ、肉の油が汗が滴るように落ちてゆく。
レア(c)

肉の表面には肉汁が浮かび、それがまた肉にしみ込んでゆく。
カルネ(肉)は、レアからミディアムへ。
ここで、チョリソと呼ばれるソーセージを置き、パンに挟む。
チョリソも添えて(c)

大好きな国民料理、チョリパンだ。
そして、こんがりと網焼きされたところで、塩をふって出来上がり。
出来上がり(c)

ブラディが至福の顔で、切り分けてくれる。
切り分け(c)

いっただきまぁ~す。
もちろん、肉の横にはワインの聖地らしく、ビーノ・ティント(赤ワイン)のボトルが置かれていた。
セロリとキャベツのサラダ、トマトと玉ねぎのサラダを前菜に、ジューシーな肉を頬張った。
アルゼンチンやチリの肉は、日本の刺しの入った芸術的な肉とは違い、野生の味というか肉本来の味がする。
噛めば噛むほど、汁がじんわり口内を襲った。
うまい。
普段はあまり肉を食べないけれど、こんな野性味溢れる肉はするするっと入る。何より真心というスパイスがのっているから、言うことなし。
お腹ポンポンになったところで、ブラディの古今東西よもやま話に笑った。
日が傾くころ、クリコをおいとまして、ランカグアのIさん宅へ戻った。
明日は、朝から雑務をこなし、首都・サンチアゴの国際空港へ向かう。
帰国が迫ってきているのに、全然実感が湧かないのは、どうしてだろう?
                                ノムラテツヤ拝
至福の顔(c)
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テーマ:スナップ写真 - ジャンル:写真

パタゴニア | コメント:2 | トラックバック:0 |
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コメント

とても魅力的な記事でした。
また遊びに来ます!!
2014-08-28 Thu 09:34 | URL | 履歴書の見本 [ 編集 ]
履歴書の見本さまへ
どうも有難うございます。
アサードはやっぱり美味しいですね。
           ノムラテツヤ拝
2014-08-30 Sat 17:46 | URL | [ 編集 ]

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