写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

北極熊

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「野村くん、白熊という熊はいないのだよ」
昨日、フェイスブックとブログにアップしたら、早速文章の先生から注意が入った。
はい、訂正します。英語ではPolar Bear(ポーラーベア)、和名は北極熊ですね。
よく写真で北極熊が気持ちよさそうに上を向いている写真がある。僕はずっと、気持ち良いんだろうなと勝手に想像していた。
でも、百聞は一見にしかず。実際に行動を観察すると、北極熊は鼻を上にかざして臭いを嗅いでいた。人間の30倍も発達している嗅覚、それらを効果的に使うための姿だったのだ。
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やがて、北極熊は腕を枕代わりにして眠り始めた。スースーと、まるで寝息が聴こえてきそう。20分くらいそんな穏やかな時間が過ぎただろうか。突然、北極熊はむくっと起き上がり、大きなあくびをした。その姿が、まるで二日酔いで吐いている
姿と重なって、一人クスクスと笑ってしまった。
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やがて北極熊は遠くへと歩き出す。その向こうには壮大な青い海が広がっていた。
生涯忘れることのない風景に、僕はかじかんだ手を合わせた。そして嗚咽と共に涙が溢れた。
大きな氷の世界に、氷原の王者がゆっくりと、でも氷を選びながら歩いていく。その威厳ある空気感に、一瞬で虜になった。この美しき熊に生涯を捧げる人の気持ちが、分かるような氣がした。
ドリームカムトゥルー。1つの大きな夢が叶った瞬間だった。
何万回、何十万回と思い描いてきた夢の光景。でも、現実はそれらを遥かに超えていた。
              ノムラテツヤ拝
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初白熊

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ランチを食べようとしている時だった。
「ポーラーベア(白熊)を発見した」と船内アナウンスが響いた。
皆、一瞬で手を止め、自分の部屋に走り出す。カメラを持って、甲板に上がると、何処にもそれらしき気配はない。
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エクスペディションチームのウェインが双眼鏡を覗いていた。
「11時の方向だ!」
船の進む方向を12時として、東西南北を指し示す。つまり進行方向よりも少しだけ左方向だ。
カメラに超望遠レンズを付け、更に電子ズームで拡大する。
どこだ? 
その時、真っ白な雪原にクリーム色の何かが動いた。更に拡大すると、それは寝そべりながら、頭を上げる白熊だった。
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距離にして、まだ3キロはある。昨日の船長とリーダーの判断は間違っていなかったのだ。
ここ2日、まったくと言っていいほど動物が現れなかった。今年は例年よりも雪溶けが早かったため、急遽、更に北に広がる氷床地帯を目指すことにしたのだ。今朝は北緯82度まで上がってきていた。
パックアイスが浮かび、気温はマイナス3度。風が吹いているので、体感はマイナス5度以下だ。船は氷を割りながら、少しずつ近づいていく。2キロ、1キロ、そして500mまで近づいたところで、ようやく肉眼で確認できるようになってきた。そして300mまで寄ったところで、エンジンが切られた。
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「白熊は、白くない」
これが最初に思った感想だ。
白では無くクリーム色、または生成色だ。純白の白い世界にいるから、その薄い黄色っぽさが、目に染みる。
寝ていた白熊は突然立ち上がり、こちらに向かって数歩突進。そして威嚇のポーズをとった。舌は黒色、さすがヒグマから進化しただけのことはあり、皮膚は黒色なのだ。
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威嚇はしているが、まるでぬいぐるみ。この世にこんな愛らしい動物がいるのだ。その生命と僕の時間が、今、重なった。
夢の動物は、今までどれだけ想像したよりも光り輝いていた。
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体に対しての頭の小ささ、そして瞳のつぶらさに、心を鷲掴みされる。白熊の背後に広がる、無数のパックアイス。こんな広い世界の中で生きているのだと思うと、泣けてくる。
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これだけ大きな自然が無いと、1頭の白熊が生きていけないということだから。
威嚇後は、落ち着いたのか、寝転んで、座りこんで、走って、飛んで。
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まるで初めて見る僕に、様々な動きを見せてくれるようだった。
             ノムラテツヤ拝
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夢の仕事

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船旅の醍醐味、それは世界中からエクスペディション(探検)のスペシャリストが集結し、自然や動物を愛する乗客が一同に集うこと。
ランチ時に話したのは、エクスペディションチームの一員のヨハン。コロンビア人だった。ヨハンは幼少の頃、クジラとジャガーの存在を知る。一目見て、彼らと生涯を通して、一緒に過ごしたいと思ったそうだ。
大学で獣医学を学び、動物の医者となり、世界中を放浪の旅に出かけた。そこで念願のクジラと出逢い、一緒に泳ぐという貴重な体験をした。
「クジラと共に生きられる仕事に就く」
そう確信した彼は、南米最南端のアルゼンチン・ウシュアイアで、極地専門の船会社「クォーク・エクスペディション社」と出逢い、幾度も雇ってもらえないかと掛け合った。しかし答えは「今は間に合っている、空きがない」と断られ続けた。
でもそんなことでは諦めない。極地に必要なダイビングやゾディアックの操縦技術、海にまつわることなら何でも我武者羅に学んだ。そんな努力の甲斐があってか、3年目にヨハンのボスから声がかかった。彼はそこで一所懸命働いて、自分をアピール。晴れて、正式メンバーの一員になったのだと嬉しそうに話してくれた。
「今は何処に住んでいるの?」
「この船が、僕の住居だよ」
真っすぐな視線でそう答える。
「南極、北極にはクジラが沢山いる。好きなことが出来るなら、他は何もいらない。好きなことをやる人生以外は考えてない」
その強い想いが、今を進む原動力になっていた。
大切なのは、自分の心に生まれる衝動の力に嘘をつかず、努力し続けること。嘘さえつかなければ、進むべき方向へ、心がノックしてくれる。
「もし極地以外に住むなら、将来住みたい場所はあるの?」
「スリランカかサモアかな」
「なぜ?」
「だって、世界で最もクジラと一緒に泳げるからさ」
やりたい道へ一直線。たゆまず精進し、準備する。そして時が来たら、確実にその夢の糸を掴むのだ。
『好きなこと、やりたいこと、を大切にする』
それはつまり、自分の心を大切にする事に他ならないのだから。
             ノムラテツヤ拝
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ゾディアック

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午後からはフォルテンデ・フリブクタ湾でゾディアック・クルーズ。ゾディアックとは、ゾディアック社が作るエンジン付きのインフレータブルボートのこと。岩礁などの擦れに強く、軍用に開発された、屈強なエンジン付きゴムボートだ。
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8人ずつ乗り込み、氷塊を見ながら、
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陸地に目をやる。緑の草地に、白い影がポツポツと。望遠レンズで覗くと、それらは皆、レインディア(トナカイ)だった。
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岸壁には、海のピエロと呼ばれるパフィン(ニシツノメドリ)の姿。
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オレンジの地衣類の脇にムラサキユキノシタが咲き乱れていた。
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トランシーバーから連絡が入る。
「今、北極キツネが雁(ガン)を襲った」。
すぐさまボートを向けると、白黒の北極キツネが、砂利の急坂を飛ぶように登っていく。冬は全身真っ白、夏は茶色になるが、今はちょうど冬毛が夏毛に生え変わっているのだろう。
超望遠レンズに代えると、キツネの口元に白いものが。雁の卵だった。
春はキツネにとって大忙しの時。鳥の巣へ出かけては、卵を狩る日が続いていく。
             ノムラテツヤ拝
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北極ツアー

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北極ツアーが始まった。
船へ乗船すると、見たことがある顔が。
ツアーリーダーのウディと、バイオロジストのアニーだ。5年前、南極を訪れた時のエクスペディションチームで会って以来の再会だ。
船室へ通され、すぐにウェルカムパーティ。
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今回は総勢120名。年配の方が目立ち、たぶん僕は最年少。
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夕食はエクスペディションチームの一人、ベラの話を聞きながら。6月~8月は北極ツアー、12月~3月は南極ツアー、その間は故郷のカナダで
アウトドアのガイドを主にしているという。そんな生き方に共感する部分が多かった。
翌朝は快晴。リリーフック氷河と尖峰の絶景が眼前に。
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時折、雷のような音をたてて、氷河の崩落していった。
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北極を訪れるには、守らなければいけない決まりがある。
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それは「人間は闖入者」だということ。つまり、極北の地を見させてもらうという距離感だ。
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ふと視線を移すと、ハシブトウミガラスが、氷上からこちらを見つめていた。
    ノムラテツヤ拝
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